『信販会社の営業実態を知りたい人にもお勧め』
大手信販会社で債権回収に携わっていた著者は、おそらく自らの経験をベースにして本書を書いたのだろう。週刊誌タッチの読みやすさで多重債務者からの債権回収の現場を活写しており、一気に読んでしまった。自己破産や多重債務者の問題について感覚的に知りたい人には打ってつけの本である。昨今安易にリテール金融業務を礼賛する風潮があるが、本書を読むとリテール金融には闇の面がつきものであることを改めて痛感し、粛然とさせられる。事実や用語に誤りが散見されるのが惜しまれるが、これによって現場の空気を伝える本書の価値が大きく損なわれるものではない。
著者の職歴を反映して、本書に登場する債務者も無理なショッピングクレジットを組んでしまった人が多い。そして様々なケースを紹介する中で信販会社の営業実態への批判が述べられている。この部分が本書のもう一つの特長だ。信販会社の個品あっせん業務は、高度成長期に耐久消費財を求める庶民のニーズに応える形で発展してきたが、個品あっせん業務が現代社会でどのような役割を果たしているのか、外部からはなかなかその実態が把握しにくい。著者は債権回収に携わっていたのでネガティブな面に眼が行きがちという面はあるかも知れないが、本書は現代における信販会社の存在意義について考えさせる本にもなっている。
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