???大手サラ金の本社管理部という、不良債権を一手に引き受ける部署で「朝から晩まで借金の取り立てだけを専門に」行っていたという人物が、今度は借り手の味方になってくれるというから注目である。 ???その著者の目から見て、なぜこの程度で自己破産させるの? といぶかしく思うケースがこれまでに多々あったという。「ヤミ金の餌食になってしまう」自己破産をせずとも借金問題を解決する方法があると著者はいうのだ。それが本書で紹介する「特定調停」である。特定調停は平成12年に施行された裁判所の制度で、著者によれば、弁護士を頼らずに低予算で利用でき、また、サラ金の取り立てや将来の利息を止められるほか、場合によっては借金総額を大幅に減額できるという。 ???本書では、それを利用して「借金地獄」を乗り越えた人の手記や、制度のあらまし、手続きのくわしい方法などをまとめている。もうひとりの行政書士である著者は、こうした低費用の制度が推奨されてこなかった点を問題視して、「邪推」と断わりつつも、その裏にある弁護士の思惑を指摘している。「顧客」の方を向いていないと、法曹界に一石を投じるのだ。 ???特定調停の解説だけではなく、取り立て人による脅し文句や返済督促の法律書面がいかに「コケ脅し」であるか、警察で相談に乗ってもらえる人ともらえない人の違いはなにか、クレジットやサラ金苦情の各相談先にどういう順番でいかに申し立てを行うかなど、著者ならではのアドバイスを盛り込む取り立て対策をまとめている。多重債務者はもちろん、返済に汲々とすることが多い人は必読である。(棚上 勉)
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